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第三話 「数値目標とメンバー育成」

オリジナルコラム

2020/10/01

面談がオンライン中心になり、クライアントが明らかに増加した。

新規クライアントとの増加と休眠クライアントの活性化が同時に起こっていた。

新しいツールが思わぬ効果をもたらしていた。







「そういったわけで、数値目標達成だけでも大変なのに、メンバーへの対応にも頭を悩ませることになっているんです。」

そう話し終えたのは、山口恵美。

先週「掲示板」に投稿した新規のクライアントだ。



「山口さん、いろいろと大変ですね。」

田村は、心底疲れてしまっている山口をねぎらった。



聞けば、上司の課長に相談しても

「目標達成が難しいのはどの部署でも同じ」

メンバーの勤務状況については「リーダーなんだから何とかしてよ」

と言うばかりで、全く解決への糸口が提示されないそうだ。



田村は尋ねてみた。



「山口さんのチームの一番重要なミッションは何ですか?」

「会社のミッションは別にありますが、チームとしては販売目標達成です。」

今までとは異なり、断定的な口調で山口は答えた。



「それであれば・・・」

田村は、店頭業務に加わることに難色を示すメンバーへ、新しい日常に対応した

「今後の販売促進策」の素材集めをさせることを提案した。



密になることを避ける流れの中で、店頭業務が本当に顧客に支持される促進策なのか疑問に思っていることを正直に伝えた。

その上で、代替策が見つかっていない今は、まずは従来のやり方で短期的な収益を確保しつつ、

長期的な施策策定に向けた、アイデア出しとデータ集めはメンバーに外注する手法を説明した。



渋るメンバーを店頭業務に戻す為のうまい答えを期待していた山口は、明らかに不満そうな表情を浮かべたが、何も言わず田村の言葉を聞き続けた。



「お話を伺っていると、山口さんは相談できる人が少ない割に、抱えている課題が多いようにきこえます。仕事の一部を他の人にやってもらいましょうよ。これは、メンバー育成の機会になるのです。」






山口は、完全には納得していないものの、短期間だけ試してみようと思った。



「仮にうまくいかなくても、今と何も変わらない。悪くもならない。費用も掛からないから、決済も要らない。少しだけためしてみよう。」



多分に打算的な気持ちであるが、胸の内を話せた分だけ少し気分が軽くなった。




面談終了後、田村も晴れ渡るような気持ちにはなれなかった。

自信を持って勧められるアドバイスはできた。

しかし、本当にアドバイスや改善が必要なのは上司である課長の方ではないか。

キャリアコンサルタントとして独立してから、田村には部下がいない。

「自分に部下がいたらどんな上司になっていたのだろうか。」



その答えが出ないうちに電子音が鳴りはじめた。

セットしておいたアラームが、次のクライアント西条との面談時間が近いことを告げていた。



(続く)


ストーリー:かみきち
イラスト:みむら

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